幸福な無名時代
1歳。和室の仕切り棒に捕まって何回もスクワット、大きな泣き声。
2歳。お父さんの足の上で高い高い。ゲゲゲって笑う。パツパツに筋肉のついた子。ちょっとの物音ですぐ夜鳴き。夜の街をだっこして散歩。
3歳。大汗をかいてすだれ頭。仲良し3人娘。お菓子のシルクハットを楽しみにお昼寝。
4歳。お漏らしをして「ま、いっか」の名言。むにゃむにゃ英語で回り爆笑。
5歳。数秒前から両手を挙げてゴール1等賞の運動会。おっぱいの力。
6歳。男の子をひっぱりまわして遊ぶ。伝説のトラ退治ごっことピーターパンごっこ。お父さんはひも。大きなキス。
小学生低学年。ランドセルが歩いている。ちょっと内気。
小学生高学年。新体操やピアノ。覚えられずに本番で繰り返しミス。あがり性か。
お弁当を誰と一緒に食べるか、抗争に巻き込まれる。
中学生。群れない子。中学生の女の子の人間関係はむずかしい。うまく人前で話ができるようになると誘われて演劇部へ。先輩が恐かった。あこがれてバレエを始める。お嫁さんにしたい候補NO1。だけど劣等感も。
高校生。早弁、部活、バレエの繰り返し。つかずはなれずマイウェイのスタンス。行動をウォッチするファンもクラスに出現。
発表会ではスランプの高3。暗い9月。才能について考えているのか。お父さんにざわわはすごく良い出来に見えたが。
毎晩遅くまで練習。ラケットを振りながら駅までお迎えの日課。家族の安全を毎晩祈ってくれた。
4度目の受験失敗。日本に道が無くなる。追い討ちをかける出来事。バレエの先生との決別。学校での呼び出し。なぜ責められなければいけないのか。
アルバイト開始。演劇学校でであった働きながら舞台を目指す人たち。夢をあきらめない。
唯一赤点の英語だったけど留学へ。
大学1年。授業の最後に宿題が出たかどうかを先生に確認に行く。英語が分からない。でも、確認に行くだけすごい。
途中から転校してきた子の英語力、友達をすぐ作る社交力に落ち込む2月。ひとりで過ごす時間。自然が美しい。バレエと少し離れる決心。
1月からの学期が終わり、なんと良い成績。お父さん、驚く。
帰国せず、友達と暮らす5、6月。エネルギーを貯める。
ひとりでバレエの修行に出た7、8月。そこで見たのは日本からバレエを習いに来て、アメリカで舞台に立ったという女性。すごいな、そんなことが出来るんだ。新鮮な驚きとあせり。
学校に帰ってみると、友達の英語が自然に聞こえる。この武者修行の旅が、その後の流れを変える転機になる。
9月新学期。バレエカンパニーに入る。ピアノが楽しくて深夜まで弾く。どんどん吸収する。赤丸急上昇。苦節10ヶ月。全てが好転へ。バレエカンパニーでも初めてアメリカの舞台に立つ。
3月、ピアノコンクールも優勝。彼氏、親友にも恵まれる。楽しい日々。でもそれでいいのか。不満というよりエネルギーもたまり、次のステップに上りたいという意欲が強くなる。ここへ来た理由へ原点回帰。
5月、ふたたびバレエの武者修行へ。もっとダンスをやれる環境を目指す。自分で学校を探し、受験。大学の先生にも相談して転校へ。住むところもすべてひとりで探す。
またしてもアップルハウスで人に恵まれる。力を貯めて独り暮らしへ。
「そんな非現実的なことできっこない」と言われても、淡々と舞台への憧れを形にしてゆく気持ちのゆとりが出来始める。できっこないと思っていたことをやってしまう人、まわりでたくさん見てきたし、一緒にやる機会も持てるんだとわかってきたから。
9月、世界中のプロが集まるクラス。出来ないと思い込んでいたレベルがどんどん上がる。やはり異文化の中で先入観をなくすことの力は想像以上。地に足をつけた考え方になってくる。
あせったりあきらめるというのではなく、より力強く進むための安定感が出る。やるべきことがわかっているから。そうすると不思議、文化を超えた親友も生まれる。オーラが出始めてるのかな。
雑音も無く、生活のリズムと気持ちさえしっかり持てば集中も出来る。
まさに幸福な無名時代。力を貯めて、飛び立つときの方向と距離をかせいでいる今。
君は始めから才能に恵まれてすごかったわけではない。こうしてステップを登ってきている。それを見てきた家族や幼なじみや親友がいる。
君の幸福な無名時代を、お父さんもいっしょに楽しんでいる。
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