喜んでもらった感動を味わってもらいたい
お父さんが仕事を始めたころ、業者さんのオーダーで形や種類が決まる製品を扱っていた。自分で作るのではなく、オーダーが入ったら仕入先工場に注文するという商社の仕事だった。
そのころはバブル時代で、次から次へと注文の電話。でもそれは喜びではなく、苦痛が増えるばかりのものだった。
「見積もりはまだなの」
「もっと安くならないの」
「いつまでに送ってくれるの」
「もっと早くできないの」
注文を受けてから作る仕入先を探したり、そこからの見積もりや連絡を待ったり、それがなかなかこなかったり。何一つ自分で即答できるものがない。仕入先の答え次第。ただ待つのみ。そのうち業者さんからせかされる。
「なんで連絡くれないんだ」
答えようがなかったからなのに。やらされておこられて、正直、業者さんからの注文の電話が苦痛になった。お客様とは感じられなかった。
時代は過ぎて、お父さんが企画した商品を自分で売るようになった。
ほかにないユニークな製品。ただし、いままでとは違って、新しいお客様を開拓しなければならない。それも取り扱ってくれる業者さんではなく、最終的に自分で使うユーザー。
こちらからDMを出して案内する。どんなことをアピールしたら注文をくれるだろうか・・考えに考え抜く。
そしてやっとかかった見知らぬお客様からの問い合わせの電話。どんなことで興味をもってくれたのだろうか、なにが知りたいのだろうか。満足してくれただろうか。
後日お客様を訪問すると、「いやあ、製品のおかげで助かってるよ。」の一言。
この喜んでもらった感動を知らずにいたら、人生もったいない。
子供たちにぜひ味わってほしい、教えたいことなのだ。そんなのうそ臭い、リップサービスだよと思うかもしれない。大人の世界はもっとドライだと。ちがうんだな、これが。お父さん、心から言いたい。
「ほかの事では味わえない、こんなに大きな喜びが世の中にはあるんだよ」
「この喜びを知らないと人生損してるよ」
「勉強しなさい」
「なんで行かなかったの」
こんなことを聞かされてばかりでうんざりしているなら、昔のお父さんと一緒。やらされて、おこられて。
自分で好きなことを始めるしかないよ。業者さん(先生や父母)ではなくお客様(自分の作品、価値を見てもらいたい人)を相手に。勉強はその過程で必要と思ったときにはじめればいい。
お客様に喜ばれた、受け入れられたときの喜びを味わいなさい。
そしてその体験を話してくれ。
共有できたら家族として、これ以上の幸せはない。
親と子、養うものと養われるものの関係でなく、未知の世界を切り開いたもの同士としての共感。
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