お父さんからの伝言

夕食の食卓を囲んで、おとうさんが家族にするような話を書き残してゆくブログ。 家族の歴史。

Thursday, November 24, 2011

杜氏と麹菌

杜氏の麹つくりの様子を見ていると、人を育てることに通じるように思える。

杜氏は方向性を示す。
麹菌は方向性に沿ってヒートアップしがち。
杜氏はやりすぎない。
杜氏はじっくり根を張るよう、環境を厳しいものに引き戻す。
杜氏は麹菌が最大限に伸びるよう、温度だけではなく、それ以前に蒸す前の米の水分量に気を使う。
米がどんな気候で育ったかによっても吸水性が違うので、水分量も調節する。
想像力を働かせ、歴史をたどり、観察結果で修正する。
杜氏は成果を急がせない。
杜氏は変化の変局点に注意を払う。

記憶が飛ぶ

ちょっと前にやったことの記憶が飛ぶんだよなあ、最近。だから何度もおんなじことをしゃべっちゃう。
思い出せないけど、そこであきらめるとどんどん退化しそう。

音楽を聴きながら旅の風景をイメージする。長い音楽を聴きながら、それにぴったりの旅で見た風景を、映画のようにイメージする。これがお父さんの頭のトレーニングになっていたようだけど、このごろイメージがはっきり見えない。

ちょっと前にやったことも、そのときに最適の対処をすることに集中していただろう。年取って経験を重ねたことで、反射神経のように対処しているようだ。若いときは初めての経験で、迷ったり、感動したり、深く考えイメージに刻まれた。今はそれが浅くなっている。きっと老化現象に蝕まれているんだ。

世の中よく見受けられることだけど、大人が過去の経験で決めつけて、子供をしかったりするのも同じ老化現象じゃないかな。時代も前提条件も違ってきてるのに。
いかんなあ。

くるしい構想中と麹菌

酒蔵さんでは麹をうまく作ることができるかを重要視している。
麹とは蒸したお米に麹菌を蒔いて、2日間麹室で培養したもの。お米に麹菌が深くおくまで根を張りたくさん増えるように、杜氏は神経を砕いて温度調節をする。温度が上がると菌が活発になるが、あまりあがりすぎるとお米の表面だけでおわり、根を深く張らなくなる。まるで熱しやすくさめやすい人のようだ。じっくり取り組んで深く構想し、いいものに仕上げる人間のようにしむけなければいけない。
杜氏は麹菌が好きな温度をあまりあげない。好きな水分もあげすぎない。ちょっと菌にとっては環境が悪く飢餓状態にして、麹菌が水分のあるお米の中心に向かってじっくり根を張るように仕向ける。50時間くらいの時間をかけて、徐々に育ててゆく。

お父さんは杜氏のように君たちを育てたいけど、いつまでも親がいるわけではない。よりよく大人になるということは、君たち自身も自分をそういった、ちょっと飢餓状態になるような環境におくという道を、自分自身で選べるかどうかだ。それは苦しいかもしれないけど、自分を伸ばし、大切にすることにつながる。

作品を仕上げたり、構想することは苦しい。深く根を張ることだからだ。急いで表面の結果だけを追い求めることのないように。